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homulaインタビュー/homula MD 杉原奈央子氏「お客様にとっても小売店にとってもサスティナブルな選択を」

作成者: Mina Hayashi|2021/06/27 8:00:00

2回目は、homula MD 杉原奈央子氏にアパレル業界全体に見られる変化や今後のバイヤーとしての在り方についてお話をうかがいます。


ーはじめに、杉原さんの経歴について簡単に教えていただけますか。

 2005年に株式会社伊勢丹に入社、婦人営業部に配属されました。2年目からは、インターナショナルデザイナーズという婦人服の直輸入部門の担当になり、インポートブランドを壁があるお店で販売するという従来のスタイルから、壁を取り払った平場で展開するという新しい見せ方で、セレクトショップのような形態のお店を作ることになりました。その時は、チーフとして、お店の運営やイベントの企画、商品管理を任されていました。まだ、日本に代理店がない時代のバレンシアガやステラマッカートニーなども取り扱っていて、振り返ってみるとアパレル業界にどっぷりと浸かっていた時代だったと思います。

 

ー今よりも業界に勢いがあった時代に、素晴らしいご経験をなさったのですね。大変だったかとは思いますが、とても羨ましい!現在は、フリーランスとしてバイヤーをなさっているとお聞きしていますが、そういうスタイルを選ばれるきっかけや考えがあれば教えてください。

 元々は、フリーランスになる予定はまったくありませんでした。伊勢丹新宿店で働いていた頃は、色んな人との関わりを持たせてもらえる、恵まれた環境に身を置いていたと思います。例えば、私が何かをしなくても、商品や情報は入ってきますし、お客様もお店に来てくださいます。当時、そのまま働き続けることに不満はありませんでしたが、ある時から、ブランドを作っている人や営業をしている人、商品を作っている人、色んな人の働き方を自分の目で見てみたいという気持ちを持つようになりました。そこで、一度、今の場所を離れて働きたいと思い、退職を決意しました。

退職後、自分がやりたいことって何だろうと考えた時、改めて、お客様に直接商品を届けるお店を作りたいと思いました。そんな時に、株式会社JUNが運営していたメゾンドリーファーというお店から、お仕事のお誘いをいただきました。2013年、伊勢丹を退職してから数ヶ月後のことですね。

 

ーまさに、「お客様に直接商品を届けるお店作り」のお仕事ですね。百貨店とは、また違った環境での新しいお仕事は、どんな日々でしたか。

 メゾンドリーファーでは、ディレクターのライフスタイルに合ったセレクト商品を充実させるというミッションをいただき、バイヤーとして働くことになりました。年に6回ほど、パリ・ミラノ・ニューヨーク・デンマーク・モロッコなど、海外出張に行って買い付けをしていました。また、ディレクターとともに、お店の方向性や世界観について話し合いを重ねながら、セレクトに合わせたオリジナル商品の開発にも取り組みました。当時は、新しいブランドをどこのお店よりも早くセレクトすることが最優先事項でしたので、海外出張に行って商品の買い付けをしつつ、同時進行でイベントの企画を考え、オリジナル商品も製作するという目まぐるしい日々を過ごしていました。

同じ時期に、山形県寒河江市にあるセレクトショップGEAの立ち上げにも関わっていました。GEAは世界のトップメゾンに糸を卸している佐藤繊維という紡績・ニットメーカーが運営しているセレクトショップです。その土地にいる人、働いている人が、そこで作られた糸がどんな状態になって世の中に出ているかを知らない、食の地産地消はあるけれど、糸の地産地消はないだろうということで、佐藤繊維とお取引のあるブランドを買い付けてきて、お店で見せるというのが最初のテーマでした。とても面白い取り組みだと感じました。

 

 ー大都会のセレクトショップ、メゾンドリーファーのバイヤーをやりながら、地方のセレクトショップ、GEAの立ち上げ、まったく異なる思考とアウトプットが必要ですね。

 はい。GEAでの最初の2、3年は、とても厳しかったです。山形県寒河江市という場所で、高い価格帯の商品を販売するということに大変苦労しました。当初は、最新のコレクションをお客様にご提案するという東京と同じやり方でお店を作ろうとしていました。今はSNSがあるので、新しいブランドやアイテムの情報を得ることに東京と山形で時差はなかったのですが、それらを取り入れるスピードに関しては、東京と山形で大きな違いがあることに気が付きました。そこで、GEAでは、安心感のあるものや長く使えるものを取り揃えること、ネームバリューのあるものを丁寧にご提案するという方向にシフトしていきました。

また、GEAは地方のセレクトショップということで、山形県寒河江市の個性や街ごとの魅力を伝えることにも力を入れています。わざわざ足を運んでもらうためには、そのための道すじを立てて発信していかなければいけません。夏には名産のさくらんぼ、冬には雪景色の美しさ、その土地の魅力と情報をお客様に伝えていくことをとても大切にしています。時間はかかりましたが、その土地に住まい暮らすお客様の気持ちに寄り添ったお店を作ることで、今では多くの方に愛される場所になったと感じています。

 

―最後に、homulaのサービスについてのお考えをお聞かせください。

 お客様が必要なものをすぐに仕入れることができるというhomulaの仕組みは、時代にとても合っていると感じました。今必要なものを仕入れることができるということは、無駄な買い付けがなくなるということです。それは、お客様にとっても小売店にとってもサスティナブルな選択ができるということ。アパレル業界では、半年先のことを予測しながら商品の仕入れを行なって、PRをして戦略を練ってというサイクルを何十年と繰り返してきましたが、これからは、今を読む力と責任のある買い付けが求められると思っています。

2020年以降、新型コロナウイルスの影響もあって、私自身、本当に必要なものは何だろうと考えるようになりました。予期せぬタイミングで立ち止まることを強要されて、戸惑う人も少なくなかったと思います。一方で、人々が心地よいと感じる場所に立ち返るきっかけにもなったと思っています。そんな時を経て、私が山形のお店で取り組んできたことが東京のお店にもはまってきているなと感じます。私が関わっているお店のお客様を見ていると、新しいものをご提案しなくても、今あるものの中から必要なものを選んで購入してくださっています。話題性やトレンドを追いかけるのではなく、お客様に目を向けること、お客様に正しい情報をお伝えすることが今はとても重要です。

人の思考が変わってきているということは、お店にセレクトする商品やお客様にご提案する方法も変えていく時期なのだと思います。小売店の皆様には、サスティナブルな選択の一つとして、ぜひ、homulaのサービスを取り入れていただければと思っています。

 

  

杉原奈央子 homula MD

2005年株式会社伊勢丹入社、婦人営業部にて直輸入ブランドの販売、イベント運営に携わる。
2013年独立後、都内と山形県のライフスタイルショップでのバイイングを担当しながら、国内外のあらゆる展示会を巡る。現在は「CIBONE」「GEA」のバイヤー、佐藤繊維から生まれたニットブランド「kone」のディレクターを務めている。